昔、自分が幼いころ、よく母が口にしていた言葉がある。
「私は老人になる前に死ぬんだ。だって、しわだらけで、醜く、自分がよくわからないような老いぼれ姿を見せたくないから」
その言葉を聞くたび、エプロンを引っ張り、母の足元で泣きながら死なないでと訴えていたっけ。
今、そうなってしまった自分を、どう思っているのか。
長く艶やかだった髪は、灰のような白髪となり、結いまとめることもできず、伸び放しの眉や、口の周りのしわが一層老いているように見える。
手にしたタオルをどうしていいか分からず、タンスにしまう。
タオルがなくなるから、最近、靴下で手を拭くという、荒業まで使う。
だからなのか、靴下を履いていない。
履けなくなったのか、お手拭きにしているのかは定かじゃないけど・・
自分が昔、老いることを嫌がっていたことなど忘れてしまったのだろうか。
それとも、口にするのが怖いのだろうか
老いることの怖さ、辛さを、母を見て自分が感じている。
そして俺自身もいつか思うのだろう
「老いる前に死にたい」と・・・
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