2010年12月6日月曜日

病室の白い天井

病棟に移り、麻酔による幻惑のような夢と、鈍い下腹の痛みが混ぜこぜになりながら、仰向けになって薄暗い天井を見つめていた。
ナースコールと天井

そのうち、少しずつ、俺の親父のことを思い出してきた。
親父も、俺が小さいころから入院を繰り返していたのだ。

仲間を集めて酒を呑み交わすのが大好きで、俺が小さいころから、夜になると、近所の大人たちが家にあがりこみ、毎晩大宴会だった。
親分肌だったそうだ。

それが原因で肝硬変になり、俺が小学校高学年の頃から退院できなくなり、やがて帰らぬ人となった。

よく弟と一緒に親父の病棟に見舞いに行った。
大部屋の、一番通路側に陣取っていた俺の親父は、その部屋の親分気取り。
病室の皆さんや看護婦さんにチャチャを入れ、いつも明るく、楽しそうに笑っていた。
夕方になってもベッドごとにカーテンを仕切る人もなく、俺たち兄弟が帰るまで、6つあるベッドで宴会のような騒ぎだった。



きっと違う・・・

俺たちが帰ったあと、きっと誰より先にカーテンを閉め、今の俺のように、ぼんやり天井を見ていたに違いない。

今、わかったんだ。

表に出さず、悲痛な叫びを、心の中で上げていたんだ。
「死にたくない」、と。

享年39歳だった。

俺は生きるよ。
親父の何倍も人生を楽しんで生きる。

そして、いつか、親父のところへ行った時、たくさん話すよ。
じゃあね。

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