夕食も終わり、電気を消して一足早く眠りについた母が、こっそり起き出し、キッチンシンクの前で何やらやっている。
みると、クッキーをモグモグ。
両手はクッキーから溢れたバタークリームがべっとり・・・
それを洗おうと試みるが、手をこすらず、流れ落ちる水道水にあててるだけ。
???
そうか・・・・
両手をこすると手にバタークリームが広がるから、どうしていいのかわからないんだ。
仕方ない、母の手に石鹸をつけて俺が洗うことに・・・・
洗いながら、思い出がフラッシュバックしてきた。
小さく、骨だけの、脆弱な指
薄い皮の皮膚
弾力のない、母の手
この手で俺を叱り、育て、一緒に生きてきた
父の死後、きっと、この指で涙をぬぐい、苦しみに握りしめていた
子供を愛し、包んできた
優しく、強い手だった
寂しく震える乾いた手を、俺の手で温めるように
ゆっくり、そっと
もうこれ以上、壊れないように
丁寧に洗った・・・・
皆さんは、母の手を洗ってあげたこと、ありますか?
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