母親の脳の中の組織が蝋燭のように溶けて崩れていく。
今日は一日中、現在と過去、現実と夢を行き来している。
目の前には何もないのに、指が、虚空をつかんで口に入れている。
履かせた靴下を脱いでは、「今日はここまでやっておけばいい」と俺に渡す。
首を支える力がなくなったのか、ずっと伏したような恰好で座っている。
ご飯を食べる時も、頭が垂れてしまい、テーブルに額をゴツンとあてて食べている。
時々箸が止まり、茶碗を持つ手が傾斜する。
身体の筋力がどんどん落ちている。
歩く姿もおぼつかない。
蝋燭に灯った明りは、揺ら揺らと細く漂い、先に溢れた蝋が零れ落ち、蝋燭本体を焦がして溶かす。
頬を涙が伝って落ちるように・・・・
いつも背筋をシャンと立て、元気にケタケタと笑い、品佳く振る舞っていた気丈な母が・・・・
父の仏壇の前で、小さな身体を丸めながら、溶け落ちていく。
向こうにいる父さんへ
俺はどうしたらいいんだ?
このまま見ていることしか、
できないよ。
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